スペインで個人事業主(Autónomo)として働いている方、これからフリーランスとして独立・開業を考えている方にとって、気になるニュースが発表されました。

2026年10月、スペインの個人事業主やフリーランスの利益を代表する主要な業界団体「ATA(全国自営業者団体連盟)」が、政府に対して大規模な制度改革を提案しました。

その内容は、開業後2年間の社会保険料無料化、失業保障の拡充、年間売上85,000€未満の事業者に対するIVA(付加価値税)免除など、個人事業主にとって見逃せないものばかりです。

ただし、今回発表されたのは政府への改革提案であり、すでに法律が改正されたわけではありません。

では、具体的にどのような変更が求められているのでしょうか?日本人の個人事業主にも関係するポイントを、現在の制度と比較しながら解説します。

そもそもスペインのAutónomoとは?

Autónomo(アウトノモ)とは、スペインで個人事業主やフリーランスとして働く人のことです。

例えば、フリーランスのデザイナー、ITエンジニア、翻訳者、コンサルタント、個人で飲食店を経営する方などが該当します。

スペインでは、原則として税務署への事業登録に加え、社会保険への登録と毎月の社会保険料の支払いが必要になります。

この社会保険料は、事業の売上が少ない時期でも一定の負担となるため、開業したばかりの方や収入が不安定なフリーランスにとって、大きな課題となっています。

こうした状況を改善するため、ATAは社会保険や税金、雇用制度など10分野にわたる改革を提案しました。

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① 開業後2年間、社会保険料が0€になる?

今回の改革案で特に注目されているのが、社会保険料の無料化です。

現在、スペインには新規開業者の社会保険料を軽減する「Tarifa Plana(タリファ・プラナ)」という制度があります。

一定の条件を満たす新規開業者は、通常よりも低い社会保険料で事業を始めることができます。

ATAは、この制度をさらに拡充し、以下の仕組みを提案しています。

  • 新規開業者:最初の2年間は社会保険料0€

  • 30歳未満の若者:最大3年間0€

  • 出産後に仕事へ復帰する女性:最大3年間0€

  • 開業後2年間の所得が最低賃金を下回る方:最大3年間0€

例えば、フリーランスとして開業したばかりで、まだ十分な収入が得られていない場合でも、毎月の社会保険料が無料になれば、事業を軌道に乗せるまでの負担を軽減できます。

さらにATAは、低所得の個人事業主に対して、所得区分に応じた15〜75%の社会保険料軽減も求めています。

ただし、現時点で全国一律に2年間無料になる制度が導入されたわけではありません。

② フリーランスでも失業手当を受けやすく?

スペインでは、会社員が失業した場合、一定の条件を満たせば失業手当を受給できます。

実は、個人事業主にも「Cese de Actividad」という事業停止時の給付制度があります。

しかし、会社員の失業給付とは仕組みが異なり、事業を辞めた理由や経済状況などについて、一定の条件を満たす必要があります。

そこでATAは、個人事業主が事業を停止した際の給付認定を自動化し、より利用しやすくすることを提案しています。

また、52歳以上の失業者を対象とした補助金制度についても、個人事業主への適用拡大を求めています。

実現すれば、事業がうまくいかず廃業する場合にも、生活を立て直すための支援を受けやすくなる可能性があります。

③ 年間売上85,000€未満ならIVAが免除に?

税金に関する改革案として注目されているのが、「IVA franquiciado」と呼ばれる小規模事業者向けのIVA免税制度です。

IVAとは、日本の消費税に相当する税金のことです。

スペインでは、一般的な税率は21%で、個人事業主も取引内容に応じて請求書にIVAを加算し、税務署へ申告・納付する必要があります。

例えば、1,000€のサービスを提供した場合、IVA21%が適用される取引であれば、顧客への請求額は1,210€になります。

ATAは、年間売上85,000€未満の小規模事業者を対象に、IVA免税制度を導入し、申告手続きも年1回に簡素化することを求めています。

ただし、IVAが免除される場合、事業経費として支払ったIVAの控除が制限される可能性もあります。

そのため、制度が実現したとしても、すべての個人事業主にとって必ずしも有利になるとは限りません。

なお、現在のスペインでは、年間売上85,000€未満という理由だけで、一律にIVAが免除されるわけではありません。

④ 経費として認められる金額も増える?

個人事業主にとって、毎年の所得税(IRPF)を計算する際に重要なのが、事業経費の取り扱いです。

一般的に、事業に必要な支出は一定の条件を満たせば経費として計上でき、その分、課税対象となる利益を減らすことができます。

今回ATAは、証明が難しい経費に対する概算控除の拡充や、燃料費などの経費控除をより柔軟にすることを提案しています。

また、電子請求書制度を早期に導入する事業者への税制優遇や、軽微な申告ミスに対する罰則の緩和も求めています。

特に注目したいのが、「Derecho al error(ミスをする権利)」という考え方です。

これは、初めての軽微な違反について、すぐに罰金を科すのではなく、まず警告を行う仕組みです。

複雑な税務手続きに慣れていない個人事業主にとって、こうした制度は安心材料になるかもしれません。

⑤ 副業や少額収入でもAutónomo登録は必要?

「副業で少し収入があるだけでも、Autónomoに登録しなければいけないの?」

これは、スペイン在住の日本人の方からもよく寄せられる疑問の一つです。

現在のスペインでは、社会保険への登録義務を判断するうえで、事業活動の継続性・習慣性(Habitualidad)が重要な要素となります。

しかし、その判断基準は必ずしも単純ではありません。

ATAは今回、年間純所得が最低賃金を超え、かつ年間3か月を超えて事業活動を行う場合に社会保険登録を義務付けるという、より明確な基準を提案しています。

もし実現すれば、短期間の副業や小規模な事業を始める方にとって、登録義務の判断がわかりやすくなる可能性があります。

ただし、社会保険への登録と税務署への事業登録は別の手続きです。

現時点では、収入が少ないことや活動期間が短いことだけを理由に、Autónomo登録が不要になるとは限りません。

今後、スペインの個人事業主制度はどう変わる?

今回のATAによる改革案には、社会保険料の負担軽減、失業保障の拡充、IVA免税、経費控除の見直しなど、個人事業主にとって魅力的な内容が数多く含まれています。

一方で、これらは2026年10月時点では政府への提案段階です。

実際に導入されるかどうか、また導入される場合の対象者や開始時期については、今後の政府の対応や法改正を確認する必要があります。

特に、これからスペインでAutónomo登録を予定している方は、将来の改革案と現在適用されている制度を混同しないよう注意しましょう。

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※本記事は2026年10月時点の報道に基づく情報です。紹介した改革案は施行済みの制度ではなく、今後変更される可能性があります。